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恋人や友人と一緒にいても、「嫌われたらどうしよう」という不安だけが頭をもたげ、言いたいことも言えず、相手に気を遣うばかりで、まったく楽しめない。
そういう人は、「自分には恋人がいる」「友人がいる」という状況を、自分を飾るための肩書きのように思い込んでいるのではないでしょうか。

恋人に振られることを極度に怖れてしまうのは、相手との関係が壊れることそのものよりも、「私は恋人のいる人間である」というひとつの称号を失うことが怖いからです。
恋人のことが好きだから付き合っているというよりも、幸せな恋愛をしている友人への対抗意識や、以前に自分を振った異性への当てつけで、「私にだって、恋人ぐらいいるんだぞ」ということを見せつけたいだけなのです。

「他人にバカにされたくない」「つまらない人間だと思われたくない」という理由だけで、言いたいことも言えない相手と嫌々ながら付き合い、「恋人がいる」という体面だけをたもっても、それは本当の恋人とは言えません。
いえ、それどころか、体面をたもっていると思っているのは自分だけで、すでに他人からは見透かされていて、「あの人は、いったい何が楽しくて付き合っているのだろう」と思われていることのほうが多いのです。

「自分はどういう人間なのか」と自問したときに、あなたは、どんな答えが思い浮かぶでしょうか。
「一流大学を卒業した」「若く美しい」「交際範囲が広い」
これらは、「自分がどういう人間であるか」ではなく、「自分が何をもっているか」です。
「責任感が強い」「穏和な性格である」「スポーツをするのが好きだ」などということが、「自分がどういう人間であるか」を表す言葉です。
「~であること」を自信をもって語れない人ほど、せめて体裁をつくろうために、「~をもつこと」に執着してしまいます。そして、「もつこと」に執着するがゆえに、化けの皮がはがれることを怖れて、ますます自信を失ってしまうのです。

「私は恋人のことを愛している」というのは、「~であること」ですが、「私には恋人がいる」というのは、「~をもつこと」です。このふたつの意味は大きく違います。
「人を愛すること」に価値があるのであって、「恋人がいること」が重要なのではありません。
人間の価値は、「もつこと」ではなく、「あること」によって測られるのです。

志望していた大学の受験に不合格になったからといって、人生に絶望してしまうのであれば、そもそも何かを学びたいという意欲があったのではなく、「いい学校に入って、収入の高い仕事に就き、いい暮らしをしたい」という虚栄心しかなかったということです。
本当に勉学への情熱があるならば、どういう環境にあっても学ぶことはできます。受験に失敗したからといって、学びたいという意欲が衰えるものではないはずなのです。

恋愛経験の多さを自慢する人がいますが、あれはいかにも滑稽です。「私の愛情は長続きしません」と言っているようなものなのですから。
高級ブランドの服を嫌みたらしくひけらかしている人がいたら、「立派な服ですね」とおだてておきましょう。立派なのは服であって、その人自身ではないのです。
子供を偏差値の高い学校に入れることだけに熱を上げている親は、我が子をまともな人間に育てる自信がないのでしょう。いい学校に入れておきさえすれば、立派に子育てをしたとみなされると思っているのです。

「あること」が「もつこと」を生み出すことはありますが、その逆はありません。
自分の職業に誇りをもち、真剣に誠実に仕事をすることによって、地位や財産をえることはあります。しかし、地位や財産をえたからといって自分に誇りがもてるわけではありません。
他人を思いやり、他人の役に立つことができる人は、多くの人から慕われるでしょう。しかし、多くの人の関心を集めたからといって、思いやりが生まれるわけではありません。
「自分には何もないから、自信がもてない」というのは、おかしな考え方です。何もない状態で、どれだけ自信がもてるかが重要なのです。

「もつこと」は、どれだけ努力しても、自分の力の及ばないことがあります。
突然に仕事を失うこともあるし、災害で財産を失うこともあるし、恋人が心変わりをしてしまうこともあります。
しかし、「あること」は、完全に自分で決められます。これほど強い心の支えとなるものはありません。
「人の話をよく聞く」「他人の長所を見つけ、ほめる」「他人から親切を受けたときは、心からの感謝を示す」など、小さなことでもよいのです。「自分はこういう人間である」と胸を張って語れるものを決め、自分との約束を守ってください。

受験や就職に失敗したり、好きな人に振られたりして落ち込んだときは、「自分を見つめ直す機会を与えてくれた」と考えればよいのです。
「もつこと」によってごまかそうとしていた自分の弱さと向き合い、「あること」へと目を向けるための大きなチャンスです。
何年か後には、「あのときが、自分の人生の重要な転換期だった」と思えるようになるでしょう。

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