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ある心理学の本に、「人間は、明るくなければ幸せになれない」と書いてありました。
こう言われると、内向的な性格の人は、反発を感じるかもしれません。
しかし、人は誰でも、明るい性格に変わることができるのです。
「明るい人」とは、よくしゃべる人のことではありません。耳が不自由な人は皆、暗い性格なのかというと、けっしてそんなことはありません。
うるさいほどに話し好きでも、ひねくれた性格の人もいますし、もの静かでも、活き活きとした毎日を送っている人もいます。
人間の明るさとは、物ごとのとらえ方、現実の受け止め方によるのです。
明るい人と暗い人の違いは、実際に起こった出来事のよしあしによって決まるのではありません。
「自分には不運な出来事しか起こらないから、暗い性格になってしまったのだ」と考えている人がいたら、それは間違いです。
苦しみは、「思うがままにならない」という気持ちから生まれます。
すなわち、「自分の思い通りにならなければ気がすまない」というごう慢さが苦しみを生み出すのです。
人生は、思い通りにならなくて当たり前なのです。
明るい人は、何もかも自分の思い通りにことが運んでいるわけではありません。
明るい人にも、不運は容赦なく降りかかります。しかし、明るい人は、「不運」を「不幸」とは考えないのです。
三浦綾子さんの小説「氷点」に、次のようなセリフがあります。
「十円落したら、本当に十円をなくしたのだから損したわけよ。その上、損した損したと思ったら、なお損じゃない」
十円をなくしたという事実は単なる「不運」であり、それを気に病んでいつまでも嘆くことが「不幸」です。
小説でも映画でも、主人公が何の苦もなく生き、すべてが順調にうまくいって、「めでたしめでたし」で終わるものなど存在しません。
必ず、主人公は苦難を前にして悩み、苦しむものです。
人が小説や映画を求めるのは、主人公の悲しみや苦しみに共感し、「つらいのは自分だけではない」という気力を得るためだと言ってもよいでしょう。
人は誰でも、少なくとも一編は、人の心を打つ小説を書くことができます。自らの人生を語ればよいのですから。
自分はとても他人に語れるような人生を送っていない、などと考えてはいけません。
何気ない日常の中での葛藤、悩み、苦しみ、それらすべてが「物語」なのです。
仕事、恋愛、友人関係で、つらい思いをしたときは、心の中でこう唱えましょう。
「今、自分の人生という物語が進行中なのだ」
自分の人生に満足していない人は、漠然と、「幸せはどこか遠いところにあって、それが得られないから、自分は不幸なのだ」と感じてしまっています。
形のある幸せを手にしなければ、自分の本当の人生は始まらないのだ、と考えているのです。
しかし、そう悩んでいる姿そのものが物語なのです。人生はすでに進行中なのです。
「今の自分は、本当の自分ではない」と現実逃避しても、まさにそう思っている自分の姿が「本当の自分」なのです。
苦しみのない人生などありえません。生きているかぎり、苦しみは避けられないのです。
苦しみを「絶対に我慢できない」と思いこまず、逃げようとせず、まず、「こういうことも起こりえるのだ」と、心静かに受け入れてみましょう。
つらいときは、自分を映画の主人公に見立てて、客観的に眺めてみるのもよいでしょう。予告編のような名場面集を頭に描いてみてください。
あなたの人生という映画を観た人は、感動して勇気を得るはずです。
あなたも、自分自身に共感し、自分に勇気を与えてもよいのです。
悩むことが生きることそのものであり、その物語は、今も進行中なのです。